明石の蛾達:生涯生態 |
開始:2009/12/29 更新:2012/12/13 |
各個体は、必ずしも同一個体とは限りません。 幼虫期に於いては正確齢数を欠いたり、代表齢数のみで省略するものもあります。 又、大きさは撮影時のものであり齢数時を代表するものではありません。 |
形 態 | 卵 (約1mm強) | |
撮影日 | 2009/12/02 自然産卵 | |
ヘクソカズラの葉裏に生み付けられていたものです。 既に孵化したものと共に数個ありましたが、後に孵化したのは1個のみでした。 | ||
形 態 | 幼虫 孵化翌日の初齢(約3.5mm) | |
撮影日 | 2009/12/08 室内飼育 | |
尾角を除き全体に濃アイボリー色をしている。 ※残念なことに、この子は遅くに孵化したため 寒さに耐えられず衰弱死しました。 ※齢数の判別は主に尾角で行えるようです。 ※以降の大きさに尾角を含んでいません。 | ||
形 態 | 幼虫 初齢後期(約8mm) | |
撮影日 | 2009/12/02 室内飼育(ヘクソカズラ) | |
体色は食べた葉っぱのため緑化し、表面は艶のある光沢状です。 周囲にあるのは孵化後の卵殻です。 尾角:全体に黒い棒状です。約1mm強。 | ||
形 態 | 幼虫 若(2)齢 眠状態(約12mm) | |
撮影日 | 2009/12/04 室内飼育(ヘクソカズラ) | |
体色は次の齢に備えて白くなっていますが、未だ表面は艶のある光沢状です。 尾角:根元がやや太くなった円錐状で全体に 淡茶色です。約2mm。 | ||
形 態 | 幼虫 中(3)齢 脱皮直後(約13mm) | |
撮影日 | 2009/11/26 室内飼育(ヘクソカズラ) | |
体色は白い筋状が現れるため白っぽくなり光沢状でなくなります。 未だ頭には筋状模様は現れていません。 尾角:表面に散布されている粒状のものが 明確になります。約5mm弱。 | ||
形 態 | 幼虫 亜終(4)齢(約28mm) | |
撮影日 | 2009/11/26 (ヘクソカズラ) | |
頭、体共に緑型の終齢と同じ様になり、頭には 筋状模様が現れます。この時点で緑型と限られ ません。茶型も同じ容姿なのです。 尾角:円錐状なのは変わらず、体の亜背線を 延長した色模様になります。約7mm。 | ||
形 態 | 幼虫 亜終(4)齢 変り模様(約23mm) | |
撮影日 | 2009/12/04 室内飼育(ヘクソカズラ) | |
亜背線および体側の斜条が茶型のように黒っぽい個体です。 茶型になる前提かと思われましたが、各線が黒っぽい緑型になっております。 変異体を参照 尾角:円錐状なのは変わらず、体の亜背線を 延長した色模様になります。約5mm。 | ||
形 態 | 幼虫 終(5)齢、緑型(約39mm) | |
撮影日 | 2009/12/13 室内飼育(ヘクソカズラ) | |
大きさと尾角を除くと4齢時と殆ど同じです。 終齢時の型には色だけが異なる茶型があり、 2種類です。 変異体を参照 尾角:色は背が濃い赤紫のグランデション状で 先端が明確な淡黄色になります。形は 太短い状か軽く波打ち状。約7〜9mm。 | ||
形 態 | 幼虫 前蛹状態、緑型(約50mm) | |
撮影日 | 2009/12/04 室内飼育(ヘクソカズラ) | |
褐色化すると共に蛹化場所を探してうろつきまわります。 蛹室(繭)を作った後は透きとおる様な白色に変わっていきます。 | ||
形 態 | 蛹 (約30〜34mm) | |
撮影日 | 2009/12/13 室内飼育 | |
口唇が長いため前にヘラ状に飛び出した特異な形をしています。 左から側面、背面、腹面からです。 蛹化場所は地中ではなく地表のようです。地面を浅く凹ます程度で茶色の糸で粗い繭を作り表面に小石や落ち葉を貼り付け覆い隠します。 | ||
形 態 | 成虫 ♀と♂の尾毛比較 | |
撮影日 | 2010/03/** 室内羽化したものより | |
♀:ウチワ状です。外縁が円弧状になってい ないのもいるようです。 ♂:三又状で両横を持ち上げた状態でいます。 蛹で越冬したものはやや小型化する傾向があります。 |
なんでも観察 |
飼育などの観察を通じて感じたことに自分勝手な推測を行っています。 くれぐれも参考程度に留めて見てください。 |
bP 幼虫:前蛹前の大切な作業?? | |
某掲示板での質問 某掲示板にお二人の方からスズメガ類の前蛹を控えた終齢幼虫の不思議な行動について次のような質問がされていた。 ・摂食期間を終え軟便を出した後で舐めるようにして体中に透明の液を塗りつけた。 ・体色が変化する前蛹状態になる前にしている。 ・確認できているのは、ベニスズメ、セスジスズメ、コスズメ、オオスカシバ、 シモフリスズメ、クロメンガタスズメ。 ・文献類を探したが述べられていなくて、昆虫館や博物館に問い合わせてもこの 行動自体が知られていないようだった。 ・何の目的で何をしているのかを知りたい。 数種類の飼育経験がある私だが全く気付いていない。状況や前後の行動内容から後述した推測を回答したのだが・・・。 |
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私も確認した 丁度飼育中のホシホウジャクがいたので注意をしていたところ、2個体でこのような作業途中を観察できた。 ・透明の液は、腹胸脚の裏や尾角の先に まで隈なく塗りつけられていた。 ・頭の周辺の直接が無理なところは近く のものに塗りつけた後それに擦り付け て間接的に行っていた。 ・乾燥した後は体表がリフレッシュされ た感じを受けた。 写真はケース越しのため不明瞭ですがほぼ作業が終了しているところです。 ※ホウジャクも同様の作業を行っていることを確認(2012/11)。 ※キイロスズメも同様の作業を行っていることを確認(2015/09)。 |
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私の出した推測 「表皮の撥水能力の補強」をしているのである。 幼虫の表皮には元々雨水等の水滴を弾く撥水能力が備えられています。 しかし、幼虫が大きく育つにつれてゴム風船の如く伸びきり、脱皮した時には密にあった撥水層は疎になり、その能力は低下しているものと考えられます。 何故必要なのか? 幼虫時の表皮はすぐに蛹化のため脱ぎ捨てられてしまいます。 既に摂食を終了しており体は大きくならないため表皮は伸びる必要はありません。 この時期に必要なことより、理由は蛹化までの間にあるようです。 どうやら蛹化時に表皮に求められることに関係がありそうです。 蛹化時に幼虫表皮に求められていること 幼虫時の脱皮では新しい体に移動できる脚があり古い表皮から抜け出ることができますが、蛹にはできません。 蛹化時は未だ柔らかい体を部分的に膨らませお尻のほうに移動させることにより表皮を押しやり脱いでいきます。 このため、表皮は水分を失いつつ速やかに縮んでいく必要があります。 又、狭い蛹室(繭)の中に脱ぎ捨てられる表皮は、蛹に影響を与えぬため出来るだけ小さく縮んでいなければなりません。 従って、蛹化時に幼虫表皮表面には水分や邪魔になる付着物があってはならないのです。 蛹化迄には 蛹化に際し幼虫は地表に降り条件の良い場所を求めて彷徨います。 途中で水溜りや湿った枯葉や土に潜ることもあるでしょう。 必ず対峙するのが蛹室を作った後に余分な体液(不要となった器官を溶かし余剰水分と混ぜたものと推測)を排出する時です。 この体液は蛹室の壁を経て周囲の土などに滲み込まれ固まり蛹室の補強に使われます。 しかし、狭い蛹室内でのことです。必然的にこの体液が幼虫表皮に付着することが発生します。 撥水能力を高めた効果は 撥水力を持つ幼虫表皮に対して蛹室壁面は吸水力が高い状態にあります。 幼虫表皮に水分や体液が付着したとしても壁面に押し当てるだけで綺麗に除去することが出来、蛹化時の脱皮を支障なく行うことが出来るのです。 又、老化し脆くなっている幼虫表皮の補強にもなっていると考えられます。 |